南が丘動物通信

フェレットのインスリノーマ 11年03月22日

インスリノーマは膵臓のβ細胞腫ともよばれて、β細胞の過形成から腫瘍にいたる変化です。異常なβ細胞から過剰にインスリンが分泌され、低血糖を生じます。
臨床的な症状としては、元気消失、慢性的な衰弱、食欲不振、体重減少、異常な行動や動作が認められます。慢性的あるいは重度な低血糖は脳障害を引き起こします。
慢性的な低血糖や繰り返し低血糖を起こしている場合、明らかな症状を呈さないものも多いです。治療としては、大きく内科治療と外科治療があります。
内科治療の目的は、低血糖による症状の改善です。つまり、血糖値を正常化することではなく、低血糖症状の緩和です。食後の急激な高血糖によってインスリン分泌が刺激されるのを予防するために、グルコース吸収が徐々に行われるようなフードを給餌することが望ましいです。Hillsの猫のl/dが効果的であるといわれています。
食餌のみでコントロール不可能な場合、第一に選択されるのがグルココルチコイド療法です。グルココルチコイドは末梢組織におけるブドウ糖の取り込みを阻害するとともに、細胞レベルでインスリン作用に拮抗し、肝臓での糖新生に繋がります。
そのほか、グルココルチコイド療法でもよい反応が得られない場合や、副作用が認められた場合、ジアゾキシドというサイアザイド系利尿剤の使用が必要になる場合もあります。
外科治療の目的としては確定診断および病巣の減量です。確認不可能な腫瘤が存在していることも多く、根治治療とならない場合もあります。しかし、外科療法を行うことによって、内科治療の成功率を高め、生存率を延ばすことが期待できます。
インスリノーマは、根治は困難ですが、上手くコントロールできると、予後は悪くない病気です。フェレットには多く認められる疾患ですので、疑わしい症状が出た場合はご相談ください。