南が丘動物通信

免疫介在性溶血性貧血 10年10月12日

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免疫介在性溶血性貧血(以下IMHA)は、免疫機構を介する赤血球の破壊によって赤血球数が急激に減少し、貧血が起こる疾患です。猫よりも犬で多く認められ、アメリカン・コッカー・スパニエル、プードル、ミニチュア・シュナウザー、コリーなどで発生頻度が高いとされています。オスよりもメスで発生頻度が高く、平均発症年齢は約6歳ですが1~13歳で発生する危険性があります。
IMHAは原発性(特発性)と二次性の二つの病型に大別されます。原発性IMHAは、自身の赤血球細胞膜抗原に対する自己抗体が産生される事によって起こる自己免疫性疾患であり、遺伝的素因の関与が疑われています。IMHAのほとんどがこの原発性IMHAだと考えられています。二次性IMHAは、正常な赤血球細胞膜変性させたり、赤血球細胞膜に結合したりする非自己抗原に対する免疫反応によって引き起こされます。細菌、ウイルス、寄生虫などによる感染症や腫瘍性疾患が、二次性IMHAの原因として考えられています。
IMHAの症状としては、元気消失、食欲不振、発熱、頻呼吸、呼吸困難、嘔吐、下痢、赤色の尿、黄疸などが認められます。IMHAの犬のうち、約50~70%で「エバンス症候群」と呼ばれる血小板減少症が併発しますが、それが重度になると点状出血、斑状出血、メレナ(黒色でタール状の便)が認められます。
診断は、ヘマトクリット値が25~30%以下の貧血の存在、溶血兆候の存在(ヘモグロビン血症やヘモグロビン尿症など)、赤血球に対する抗体の存在を示す兆候の存在(球状赤血球の出現、赤血球の凝集、クームス試験陽性など)、溶血性貧血を起こす基礎疾患の除外、免疫抑制療法に対する適切な反応がある事、などから下されます。
治療には、輸血、免疫抑制剤の投与、血栓塞栓症の予防が主に行われます。