南が丘動物通信

犬の精巣腫瘍 09年05月15日

 精巣腫瘍は6歳以上の犬に多くみられ、腫瘍化する細胞によって、セルトリ細胞腫、精上皮腫、間細胞腫に分類されています。その中でもセルトリ細胞腫の発生頻度が最も高く、セルトリ細胞腫では過剰のエストロゲンが腫瘍細胞から分泌されるために、皮膚や被毛の代謝異常を起こして脱毛や皮膚炎を起こします。またエストロゲンにより骨髄の働きが抑制されます。精巣腫瘍の転移率は10%以下と低いので、通常は精巣摘出により完治が望めます。しかし、骨髄抑制が進み血小板減少や貧血をおこしてしまうと手遅れの状態になってしまいます。このような背景から、精巣腫瘍は早期診断・治療が非常に重要な疾患です。去勢手術をされていない雄犬を飼われている方は、睾丸の大きさに左右差がないか時々触ってあげてください。
 また停留精巣といって、精巣が正常に陰嚢内に下降していない雄犬では、陰嚢内に精巣がある雄犬と比較して10倍以上の確率で精巣腫瘍が発生します。精巣が一つしかない、あるいは去勢手術をしていないのに精巣が見当たらない雄犬は早めに去勢手術をすることをお勧めいたします。