南が丘動物通信

サリドマイド 09年01月27日

1960年代に薬害事件をおこし、販売禁止になったサリドマイドがさまざまな病気に効果があることが分かってきました。50以上の病気をおさえる効果が期待できるとのことで注目を集めています。
癌の転移、血管新生、自己免疫性疾患、リウマチ、ベーチェット病、エイズ、インシュリン抵抗性などに効果があると思われています。サリドマイドの効果はTNF-α(腫瘍壊死因子)という物質の産生をコントロールする作用と考えられています。TNF-αはリンパ球などから分泌され、免疫機能を高め、癌細胞などを殺す働きがあります。しかし多くできすぎると逆にいろいろな悪影響を及ぼすことがあります。癌や結核の末期の悪液質・免疫が自分の体の一部を攻撃する自己免疫疾患・失明や癌の栄養補給路ができる血管新生・癌の転移・エイズウイルスの複製などがTNF-α分泌過多による悪影響ですが、これらを抑えることで病気の治療に期待されています。人の多発性骨髄腫に対してはアメリカなどの10数カ国が承認をしています。日本では承認されていない薬であり、外国から医師をとおして個人輸入されている状況です。動物の癌においてもサリドマイドが非ステロイド性の消炎剤などとともに寿命を延ばす効果が期待されており今後の動向が注目されています。当院での使用例においても腫瘍の血管新生抑制作用は眼に見えて効果があります。今後期待される薬の1つです。