南が丘動物通信

1月30日 葉月会 18年01月30日

猫の糖尿病

今回、日本臨床獣医学フォーラム会長であり、ねこ医学会会長の石田卓夫先生に猫の糖尿病に関する講演を受けました。

まず糖尿病とは①血糖値が高い②尿に糖が出るといった認識があります。

これらは病気の本質ではなく結果であり、インスリンの欠乏or効果がないことが原因となっています

症状としては多尿多飲・体重減少・多食があり、それぞれの仕組みは

多尿多飲細胞や組織での糖の利用が低下する→体が糖を補給しようとする→高血糖が起こる→腎臓から尿に糖が漏れ出る(再吸収不能)ことで多尿が起こる→水を求めて多飲が起こる

体重減少:細胞での糖の利用能が低下→飢餓状態→肝臓や筋肉からの糖新生→痩せていく

多食:細胞が飢餓状態→必要なカロリーを摂取できていない→空腹感があるため多食

となっています。そのため糖尿病の診断は特徴的な臨床症状と血液検査等で判断します。

糖尿病の猫の治療方法定期的にインスリンをうち、血糖値をコントロールすることです。しかし、注意点は低血糖になりすぎないようにすることです。食欲がなくご飯を食べてない子にいつもと同じ用量のインスリンを打つことで低血糖を引き起こすこと可能性があります。糖尿病という病気とうまくお付き合いできる形を保つことが大切であることを改めて認識しました。

H.F

1月27,28日 第18回日本獣医がん学会 18年01月27日

12728日 第18回日本獣医がん学会

 第18回日本獣医がん学会がホテルニューオータニ大阪で開催され参加してきました。今回は教育講演で座長もさせていただいたため少し緊張いたしました。

 メインシンポジウムは脾臓の血管肉腫についてでした。この腫瘍は脾臓に発生するとても悪性度の強い腫瘍なのですが特に症状を示さないために発見が遅れ、お腹の中で破裂してから初めて発見されることの多い厄介な腫瘍です。特に印象的だったのは周術期の麻酔管理で様々な最新の知見を基に講義していただきました。外科手術の後は抗癌剤治療を行いますがやはり従来から行われているドキソルビシンによる治療が現在では最も信頼のおける方法であると再認識いたしました。

T.S.

1月25日 RECOVER CPR Training & Certification実習 18年01月25日

125日 RECOVER CPR Training & Certification実習

ダニエル・フレッチャー先生 

北摂ベッツセンター

ファームプレス社主催の、RECOVER実習に参加してきました。RECOVERとは、Reassessment Campaign on Veterinary Resuscitationの略で、獣医救命救急医療学会と米国獣医救命救急医療専門学会共同で全世界の100名以上の専門獣医師により作られた救急救命ガイドラインのことです。最新のエビデンスに基づく統一したCPRガイドラインにより、心肺停止に至った犬や猫の救命率を改善させ、これを世界各国に広めることを目的としています。米国以外では初めて日本で開催されました。

 この実習に参加するためには全部で6回のウェブセミナーを受講して基本的な知識を勉強し、それを実践する形でプログラムが組まれていました。普段からCPRは行いますが、今回の参加によってしっかりと体系立てて実施することができるようになりました。実習はモデル犬(ロボット)を使用し、症例のプロフィールを知ったのちにバイタルサインを取ったり実際に気管挿管や投薬などを行います。もし適切な処置がなされれば患者(ロボット)はちゃんと蘇生します。かなり実践的な内容で、ちゃんと声に出して言うことで周囲と情報や治療内容を共有したりすることの重要さも再認識いたしました。

 これからの診察に活かしていこうと思います。

T.S.

1月20日 第160回JAHA国際セミナー  18年01月20日

160JAHA国際セミナー インターベンショナル・ラジオロジー

2018120日 William Culp VMD, DACVS


 インターベンショナルラジオロジー(IR)とはレントゲン透視装置や超音波装置、CT装置などを用いて体内にカテーテルや針などの医療器具を入れる治療法のことです。体に負担の少ない低侵襲な治療のため人医療ではかなり先進的ですが、獣医療ではそれほど日常的に行われているわけではありません。しかし徐々に報告例も増えているため、今回のようなセミナーが開催、当院でもなにか取り組めることはないかと参加してきました。

 小型犬にとても多い気管虚脱におけるステントでは、ステントサイズの決定がとても重要であるそうです。尿道ステントとは違って挿入においてやり直しがきき、従来式のステントよりは合併症も少なくなっているようです。鼻腔狭窄では少しでも開通性のある症例ではバルーン拡張術を行った後に一時的ステント設置を行うそうですが、バルーン拡張術では鼻の中という狭い空間で行うためアプローチが特に難しいようです。

 なかなかすぐに実践というわけにはいかない領域ですが、少しずつ情報を集めて準備をしていきたいと考えています。

T.S.

1月19日志学会 月例会 18年01月19日

志学会 月例会

平成30119

講師:岸上 義弘 先生 (岸上獣医科病院)

獣医再生医療の実際の具体例

現在、ヒト医療において幹細胞などを用いた再生医療が脚光を浴びています。今回の演題は自らの病院にも再生医療を取り入れている岸上先生による獣医学領域における脊髄損傷の犬に用いた再生医療の実際を教えていただきました。

脊髄損傷椎間板ヘルニアは椎間板物質がなんらかの衝撃により突出し脊髄を損傷するため、圧迫を取り除けば問題ないとされてきましたが、重症例では圧迫だけが悪さをしているわけではなく、衝撃由来の炎症も関与していた可能性が示唆されます

ではダメージを受けた脊髄を治療するにはどうすればいいのか?下記の手順が紹介されました。

安静 ②MRIによる診断(ヘルニアの大きさ、脊髄の炎症度) ③薬剤の使用(神経への栄養補給)

④大きなヘルニアには外科手術 ⑤虚血・炎症に対して幹細胞療法 ⑥リハビリテーション

の6つが大切とされています。

しかし、脊髄へのダメージは一次性損傷(物理的衝撃と圧迫)と二次性損傷(炎症・壊死・瘢痕化・軟化)に分かれます。ここで問題となることは炎症後に形成される瘢痕化(かさぶたみたいなもの)により治癒が妨げられるとされています。そのため瘢痕化して経過が経ってしまった慢性の椎間板ヘルニア(グレード5)では効果が低いとされています。そのため早期発見・早期治療が大事だと思われます。

HF

1月13日 葉月会腫瘍外科セミナー 18年01月13日

1月13日 葉月会セミナー

皮弁形成術

酪農学園大学 獣医臨床腫瘍学研究室 廉澤剛先生

腫瘍の中には肥満細胞腫や血管周囲細胞腫といった組織の浸潤性が高く、広いマージンをとった外科的切除が必要なものがたくさんあります。そして皮膚の切除が多い場合には単純に創を寄せるだけでは皮膚が寄りません。その場合、皮膚の余裕のある部位から皮膚とそこに走る血管を移植します。これを皮弁といいます。

 今回の講義では皮膚の余裕がない足や皮膚の引きつりが機能障害につながる肛門周囲、顎骨の切除も必要な口唇の腫瘍を切除した際の皮膚の寄せ方を廉澤先生が実際に行っている手術動画を見せていただきながら講義していただきました。なかでも上唇から下唇におよぶ腫瘍の後耳介動脈を用いた皮弁は圧巻でした。当院も腫瘍の外科的切除のあとの再建に苦労する症例がありました。今回教えていただいた減張切開とその管理も今後の治療に生かして、よりよい術後経過をおくらせてあげられるようにできたらと思います。

K.Y