南が丘動物通信

11月17日 葉月会循環器セミナー 16年11月18日

肥大型心筋の診断・治療(後編)

日本獣医畜産大学 竹村 直行先生

今回は、猫の肥大型心筋症によって引き起こされる左室流出路狭窄と収縮期前方運動に伴って僧帽弁逆流が発生するメカニズムから肥大型心筋症の治療開始時期の判断の提案、具体的な治療方法などの講義でした。猫の肥大型心筋症の合併症として最も気をつけるべきもののひとつに動脈血栓塞栓症があります。猫の動脈血栓塞栓症の7割近くが心臓に関連した病気から発生しているという報告があるように、肥大型心筋症からの発生は少なからず経験します。治療法には外科的切除やバルーンカテーテルによる摘出、血栓溶解療法などいくつか選択肢はありますが、そもそも血栓を起こさせないようにあらかじめ治療を行っておくのが最善の方策です。猫の心臓病は、初期の段階では聴診だけでは発見が困難であることが多いです。健康診断には血液検査だけでなく、レントゲン検査や超音波検査も併せて実施されることをお勧めします。

T.H.

11月12日 葉月会 廉澤先生セミナー 16年11月12日

手術ビデオを用いた外科セミナー

酪農学園大学 伴侶動物医療部門(付属動物病院伴侶動物医療部門 腫瘍科)

廉澤剛 教授

 今回も講義の後に、廉澤先生が実際に執刀された手術ビデオを見ながら解説を聞くというスタイルのセミナーで、視覚的にも理解しやすくなっていました。 

 胃腸の腫瘍の治療においてはほとんどが外科手術適応になり、また異物の誤飲や腸の生検など、腸管の手術は日常的に適用することが多い手技になります。手術の基本は解剖の理解からなので、まずは解剖から始まるのですが、直腸だけは動脈がループしていないためにできるだけ血管を温存しなければならないことがポイントでした。先生が何度もおっしゃっていたのは、とにかく血流の確保と確実な並置縫合を行うということで、この2つが完全になされればまず手術後の離解はないとのことでした。血流を確保するためには、腸間膜を結紮したあとにしっかりと腸の色を見ることが大事で、色の違いを写真でもビデオでも確認することができました。2つのコツを常に守りながら手術に臨みたいと思います。

 この講義はいつも廉澤先生の手術を見ながら、先生がどんなところに苦労したかを解説してくださるために、とても実践的なセミナーだと感じます。これからの診療に活かしていきたいと思います。

T.S.