南が丘動物通信

3月29日 葉月会遺伝病学セミナー  16年03月30日

犬における遺伝病を考える

日本大学生物資源科学部教授 津曲茂久先生


人と同様に動物でも多因子病(遺伝子因子と環境因子が原因で発生)は多くあります。犬の代表的な多因子病としては、股関節形成不全や膝蓋骨脱臼のような整形疾患や、動脈管開存症や心室中隔欠損症などの先天性心疾患などが挙げられます。一方、人と異なり動物では単一遺伝病である常染色体劣性遺伝病も多々あり、単一遺伝病であるがゆえにDNA検査によりアフェクテッド、キャリアー、ノーマルの診断が可能となります。犬の代表的な常染色体劣性遺伝病の中には、進行性網膜萎縮症(ミニチュア・ダックスフンドで多い)や潜在精巣、フォン・ウィルブランド病などが含まれ、私たちが日常の診療で目にする疾患も少なくありません。

遺伝病遺伝子検査を行うメリットとして、疑わしい疾患の確定診断が可能な点、繁殖・発症前の診断法となりうる点、遺伝病キャリアーの診断が可能な点が挙げられます。今回の講義で、遺伝病への理解を深めるとともに、遺伝子検査の普及の重要性を感じました。

H.B.

3月26,27日Improve International 小動物外科学GPCertプログラム 16年03月27日

モジュール9 尿路および生殖器の外科

モジュール10 胸部外科

Eric Monnet, DVM, PhD, FAHA, DACVS, DECVS

 今回は日常的によく遭遇する尿路外科についてと、あまり外科手術は日常的ではない胸部外科についての講義でした。 講師のEric Monnet先生はとても著名な方で、講義も無駄なところがなく整理されていて分かりやすかったです。

 前立腺の疾患はとても多く、良性前立腺過形成、前立腺嚢胞、前立腺膿瘍、前立腺腫瘍などがありますが、まずは各疾患の鑑別が必要です。犬の前立腺疾患ではほとんどの症例に血尿が見られ、教科書でよく記載されている便秘や排尿困難は腫瘍で多いとのことでした。直腸検査における各疾患の鑑別方法も勉強になりました。前立腺腫瘍の摘出は神経の温存などが難しく、90%の症例で尿失禁が術後に現れるとのことでしたが、前立腺腫瘍の患者さんは多いためにやはり手術が検討されます。

 胸部外科は手術症例がそれほど多くないために開腹手術に比べると知識が足りないために、今回の講義は開胸手術の基本から解説してくれたためにとても勉強になりました。開胸といってもいくつかの方法があり、肋間開胸術と胸骨正中切開のそれぞれの利点欠点を理解することが出来ました。また開胸術は痛みが大きいため、術中、術後の疼痛管理の方法も講義がありました。緊急疾患である肺葉捻転は大型犬とパグで多いのですが、これは連続してレントゲンを撮影すると徐々に肺が大きくなっていくのが分かるそうです。捻転した肺葉は捻転を整復せずにそのまま根元から摘出します。動脈管開存症は犬の心臓奇形の中では最も多いですが、この手術には血管の慎重な分離が必要になります。先日当院でも手術がありました。

軟部外科の講義は今回で終了し、5月には今回の内容の実習が行われます。しっかり復習して臨みたいと思います。

T.S.

3月15日 第150回JAHA国際セミナー  16年03月16日

胸部疾患に対する外科手術

講師:Dr. Robert Dudley

今回は代表的な胸部疾患の外科治療をテーマに、「犬と猫の膿胸」、「自然気胸」について講演いただいいました。膿胸および気胸はいずれも症状として頻呼吸と呼吸困難を起こします。犬の膿胸では異物が感染巣として存在する可能性が高く、また自然気胸では内科治療と比べて再発率が低いということもあり、どちらも外科治療が選択されることが多いです。

今回のセミナーでは、実際の症例における診断や治療(外科手技)、術後管理のポイントなどを多くの写真も交えて具体的に理解を深めることができました。

H.B.

3月14日 葉月会眼科セミナー 16年03月14日

明日からの診療に活かす実践獣医眼科セミナー12回目

眼瞼・眼窩疾患 PART2

どうぶつ眼科クリニック 辻田 裕規先生

 今回は眼球突出を起こす疾患に関しての講義をしていただきました。基本的な解剖学的知識から、どのように鑑別診断を行っていくかについて、表やフローチャートを用いて分かりやすく説明して頂き、その後でそれぞれの疾患について具体的な症例を基に詳しく講義していただきました。

 猫においても同様ですが特に犬の眼球突出の症例では、外傷性や腫瘍だけではなく、咀嚼筋炎や外眼筋炎などの筋疾患や、口腔内疾患との関連性など偏に眼球突出といってもその原因は様々です。そのため、疼痛の有無などといった基本的な臨床症状をきちんと理解して診察に当たることが重要であると改めて認識しました。

S.A

3月8,9日 第80回NAHA国際セミナー 16年03月09日

エキゾチック動物の外科医学

Jorg Mayer

DVM, MS, DABVP(ECM), DECZM(Small mammal), DACZM

Associate Professor of Zoological and Exotic Animal Medicine

College of Veterinary Medicine, University of Georgia

ジョージア大学でエキゾチック動物を専門に診察をされており、米国獣医師専門医認定機構において初めてエキゾチック伴侶動物での専門医認定を受けたMayer先生のセミナーに参加してきました。エキゾチック動物とは獣医の世界では犬猫以外の動物をさします。つまりウサギ、フェレット、小鳥をはじめ、ハムスター、ラット、モルモット、爬虫類など、すごく多岐にわたる分野であり、また大学教育はそれほど充実していないために、エキゾチック動物の勉強会は貴重な機会となります。

 エキゾチック動物を診る上で大事なのはその動物がどんな生活をしているのかをまず知る事が大事だとおっしゃっていました。つまりその動物がどんなものを食べて生きているか、その栄養学が基本となります。ウサギにおいては乾草が盲腸壁を引っ掻くこと(scratch factorというらしいです)が、腸の蠕動運動の促進になること、また強制給餌のしすぎに気をつけることが勉強になりました。

 またウサギでは痛みやストレスが強いと、それが状態を急変させる引き金になることがあり、まず先に鎮静させて少しずつ診察する上で重要で、逆にフェレットは最初に一気に原因を追及してから治療をするなど、動物種による違いもあることが印象的でした。

 外科手術においては避妊手術が中心でしたが、ウサギの避妊手術に始まり、トカゲや鳥類の避妊手術もやられているそうで、手術動画も見せて下さいましたが衝撃的でした。ウサギの避妊手術は当院でも実施していますが、鎮静、鎮痛などの麻酔管理を含めた基本から見直しをすることができました。

T.S.