南が丘動物通信

12月19日、20日 第103回日本獣医循環器学会、第91回日本獣医麻酔外科学会 合同大会 15年12月21日

北海道で開催された上記大会に参加してきました。今回、麻酔外科学会のトピックの一つにRECOVERガイドラインについての講演がありました。RECOVERガイドラインとは、心肺停止時における心肺蘇生法(CPR)の手順を、より救命率が高くなるようにエビデンスに基づいてガイドライン化したものです。今までは、各獣医師の経験に基づいて行われることの多かったCPRをガイドライン化することで、どの獣医師においても安定かつ迅速に行えるようになることが期待できます。院内普及をし、より救命率が高くなるよう努力していきたいと思います。

12月10日JAHA国際セミナー:猫医学のコツと最新情報 3日目 15年12月10日

Dr.Sarah Caney    BVSc PhD DSAM(Feline) MRCVS and CEO of Cat Professional Ltd

3日目は甲状腺機能亢進症の診断、甲状腺機能亢進症に対する最適な管理、骨関節炎と高齢猫、便秘と高齢猫 、原発性アルドステロン症についての講義でした。

 甲状腺機能亢進症は猫ではとても多い内分泌疾患です。日常的に遭遇することの多い疾患ですが、改めて専門家の考えを聞くことができて整理することができました。高齢猫に多いとされていますが、割と中年齢にも多く、年齢では除外できないために痩せてきた猫では甲状腺は常に考慮せねばなりません。院内で測定する甲状腺ホルモンの解釈や、TSHを併用した診断、また肥満と甲状腺ホルモン値の関係性についても理解を深めることができました。

 12歳以上の高齢猫では90%以上がなんらかの骨関節炎を罹患しているそうですが、犬と違い、びっこを明らかには表さないために気づいていない飼い主さんが多いようです。抱っこを嫌がったり、階段を降りさせてみると症状が分かります。人と同じで関節炎は根治は難しいですが、痛みを軽くしてあげるための治療を行ったり猫が暮らしやすい環境整備を行う事で快適に過ごさせてあげることはできます。

 猫も高齢化社会になりつつありますので、これからも高齢猫に優しい診察を心がけてまいります。

T.S.

12月9日JAHA国際セミナー:猫医学のコツと最新情報 2日目 15年12月10日

2日目は高齢猫で多い慢性腎不全(CKD)における診断、治療、長期的な管理についての講義でした。CKDは、より早期に発見し、食事管理等の治療を開始することが肝要です。治療については従来の方法が大きく変わっている訳ではありませんが、新しい血液検査の方法で早期に診断できる可能性があったり、尿検査結果の解釈においても、従来より治療開始時期を早めた方がより生存期間が延びる可能性があるなど、有用な情報が得られました。今後の診療に活かしていきたいと思います。

12月8日 JAHA国際セミナー:猫医学のコツと最新情報 1日目 15年12月09日

JAHAの国際セミナー Dr.Sarah Caney(Vet Professional Ltd)

高齢猫の最適ケアを目指しての副題のついたセミナーです。日本も現在猫ブームと言われて犬より猫を飼う人がふえているようです。11歳以上の高齢猫は3分の1以上が病気を抱えています。ただ、多くの疾患は無症候性の中で進み発見が遅れることが多いのが特徴です。猫は病気を見せないようにしている動物なのです。

甲状腺機能亢進症、慢性腎不全、高血圧症が代表的なものです。このような疾患は検査によって早期発見が可能で、そのことにより、生活の質が維持され、長生きさせることができます。健康診断こそがもっとも必要なことなのです。

7歳以上はすくなくとも1年に1回の健康診断、血液検査、尿検査、血圧検査

11歳以上はすくなくとも半年に1回の健康診断、血液検査、尿検査、血圧検査、甲状腺ホルモンの測定

15歳以上は3ヵ月に1回の健康診断、すくなくとも半年に1回の血液検査、尿検査、血圧検査、甲状腺ホルモンの測定  が推奨されます。

また、15歳以上では認知症、慢性関節疾患も多く認められるそうです。

当院でも高齢猫は慢性腎不全の子たちがいつも沢山通っていただいています。もし早期発見できていたらこんなに大変にならなかったのに、増悪期に早く気付いて進行せずに済んだのに、もっと楽に長生きできたのにという症例が多くいます。

また毎年沢山の猫たちが甲状腺機能亢進症になり手術を受けていただいております。ただ発見が遅かったために後遺症とお付き合いしていかなければならない場合もあります。

高血圧の猫ちゃんでは眼底出血で失明して連れてこられる子が毎年数頭います。高血圧は眼では眼底出血、網膜剥離、中枢神経では脳浮腫、痙攣、心臓では心肥大、左心不全、弁膜症、腎臓では慢性腎疾患の悪化、蛋白尿を起こします。

尿検査、血圧の評価の仕方を詳しく教わりました。またサイレント甲状腺機能亢進症の話題は興味深く聞きました。高齢猫の飼い主さんに健康診断の重要性を訴えていきたいと思いました。

S.S