南が丘動物通信

10月17日 葉月会セミナー 15年10月18日

獣医呼吸器疾患シリーズセミナー

鼻腔・鼻咽頭疾患

日本獣医生命科学大学 藤田道郎 先生

今回の講義は鼻咽頭の異常についてでした。鼻腔・鼻咽頭はレントゲンでもわからないことが多く、確定診断を得るにはCTMRI、組織検査が必要になることがほとんどです。ダックスフントのリンパ球形質細胞性鼻炎の診断に逆くしゃみがあるかどうかが役立つこと、また、若齢では生理反応の一つである逆くしゃみが突然出るようになるといった場合には、何らかの異常が起きている可能性が高く、逆くしゃみが原因で誤嚥性肺炎を起こすこともあると教えていただきました。突然の逆くしゃみの原因として多いのが鼻腔内の異物で、放置していると鼻咽頭狭窄を起こしてしまうこともあるので今後より注意して診察に生かしていきたいと思います。

M.M.

10月12日 中部小動物臨床研究会 15年10月12日

中部小動物臨床研究会

色々な発表を見せていただき、勉強になりました。その中でも印象的なものを紹介したいと思います。

犬の重度(僧房弁閉鎖不全症:MR)切除僧帽弁の臨床病理像 金井孝夫先生

通常のMRでの僧房弁の形態的変化では弁膜の肥厚は認められず、腱索が伸長し弁膜が心房内へ入り込む所見を持つが、今回見られた症例では弁膜の肥厚と粘液偏性を起こしているという特徴が見られ、ヒトのバーロー症候群と呼ばれる病態に酷似していることがわかった。エコー上では通常のMRとの鑑別は難しく、肉眼での判断も難しいため病理組織検査に出すことが確定診断に必要となるが、更なる検査で後発犬種等が認められるようになれば、MRに対する治療方針やグレードの判定もまた今までと違ってくるのではないかということが示唆され、MRに関して改めて考えさせられるような発表でした。

当センターに来院した難治性潰瘍性角膜炎の原因に関する回顧的調査 岡本有一先生

角膜炎は通常の診察でもよく見られる眼科疾患の一つです。それが治療に反応しにくい原因として犬と猫とでは原因となることが異なり、犬では難治性の角膜炎のうち47.3%がドライアイ、18.9%SCCEDs、重度の細菌感染が17.6%と続くのに対し、猫では70.6%がヘルペスウイルスによるものが最も多く、次いで細菌感染が23.5%と大きく異なっていました。潰瘍までいかないような角膜炎でも以上の原因により治療が困難になってしまうことから、基本的な細菌感染の有無や涙量の確認が普段の診察から重要であると改めて感じました。

S.A

10月3,4日Improve International 小動物外科学GPCertプログラム 15年10月04日

上部気道、喉頭、気管の手術

口と咽頭の手術、外耳と中耳の手術

Dick White, BVetMed PhD DipACVS DVR DSAS FRCVS

Dick White先生はケンブジッリ大学で25年間勤務され、多くの専門医を取得し現在は200人以上のスタッフ(50人の獣医師のうち30人は専門医)を抱える病院をされており、ヨーロッパを代表する外科医です。慈善事業もされており、人間的にも素晴らしい方だと感じました。

今回のテーマで印象深かったのは喉頭麻痺と耳の手術です。

喉頭麻痺は大型犬のシニアで多く、激しい呼吸困難に陥るために患者もご家族も大変心苦しい病気です。Dick先生の作成したCG動画はとても分かりやすく、複雑な解剖と手術手技を理解しやすいものにしてくれました。耳の手術においても同様です。また犬においては鼓室胞切開をしないほうが合併症も少なく、また成績も良いというのも大変勉強になりました。

T.S.