南が丘動物通信

中枢性尿崩症 17年07月30日

 中枢性尿崩症は、脳の視床下部における抗利尿ホルモン産生部位の破壊、抗利尿ホルモンを下垂体後葉へ運ぶ主要な軸索の欠損、後葉に貯蔵された抗利尿ホルモン放出能の崩壊により、抗利尿ホルモンが腎臓へと命令を出せなくなり、その結果尿が濃縮されずに出てしまう状態に陥ることをいいます。

 そのため中枢性尿崩症の犬は水制限をしても尿を濃くすることが難しく、水制限後も尿比重を測定すると低張尿(1.006以下)のままとなります。病因としてはいろいろなことが考えられますが、特定できる最も一般的なものとしては頭部の外傷、視床下部あるいは下垂体後葉の腫瘍が原因となりえます。また、炎症、動脈瘤、嚢胞なども同じく原因となりえます。人では免疫介在性の 炎症によって中枢性尿崩症が起こるとされていますが、動物ではこのようなタイプは今のところ報告はありません。

 尿崩症の犬は常に薄い尿を作るため、酷い喉の渇きを覚え多飲多尿の症状を示します。治療としては自分で出せない抗利尿ホルモンを外側から補ってあげる形になります。そのままにしておくと水が足りなくなってしまった場合に重度の脱水を起こしてしまいます。多飲多尿自体は他の病気の症状としてよく見られます。水を飲む量が多いかなと思ったら、どれくらい飲んでいるかのチェックと尿の検査をお勧めします。

S.A

新しい動物用止血剤 ヘマブロック® 17年07月23日

コラーゲン製剤やゼラチン製剤など様々な局所止血剤が人医療および獣医療の外科手術で用いられています。最近、新しい局所止血剤ヘマブロック®が動物用管理医療機器として承認されました。ヘマブロック®はジャガイモ由来の微小孔デンプン球(MPB)と綿花由来の微線維性カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCS)からなる植物由来の局所止血剤です。局所止血剤はそもそも実質臓器からの湧出性出血(ウージング)の止血に最も適しており、粉末状であるヘマブロック®は凸凹した臓器表面(特に肝臓など)でも比較的均等に止血剤を分布させることが可能となりより大きな止血効果が期待できます。即効性も高く、親水性のMPBCMCSが瞬時に血液中の水分を吸収して膨張し、血液成分(血小板、赤血球、血漿蛋白)が速やかに濃縮され、約12分以内に止血が完了します。また生体吸収性は良好で、適用後1週間以内に体内から消失するので余計な組織反応も起こしません。

局所止血剤は、例えば動脈性出血が持続している部位などに適用しても止血効果が発揮できないように、すべての出血部位に応用できるわけではありませんが、外科的止血の基本を考えた上で、圧迫、結紮、縫合および電気メスなどの止血機器を用いた止血などと組み合わせて適材適所に用いることが、術中のより確実な止血につながることとなります。

H.B.

2017年7月21日志学会セミナー 17年07月22日

一般臨床家ができる獣医整形外科No.2

岸上 義弘先生(岸上獣医科病院)

前回6月に行われた講演の続編である岸上先生による臨床家向けの獣医整形外科学に参加してきました。今回は様々な骨折に対する治療の選択を症例ごとに詳しくご説明していただきました。前回のセミナーでは、骨折症例に対して開創し、プレートやピンで整復する外科手術よりも非開創で治療することがより生物学的治療法であることから今回、非開創で治療する方法5パターンを学びました。1つは6ヶ月齢未満でズレの少ない場合、副子固定のみで治療。残り4パターンはエレバ法と呼ばれるピンを用いて骨折部を整復する方法を基に、副子固定やピンニング、ステップ法などを組み合わせたものです。これらの方法を用いることで様々な骨折症例に対するアプローチができ、より正確に低侵襲で治療することが可能になりました。

H.F

第三眼瞼腺突出(チェリーアイ) 17年07月16日

 第三眼瞼腺が第三眼瞼の遊離縁から突出した状態で、突出した部分が腫大し赤色になるため、一般的にチェリーアイと呼ばれています。

 第三眼瞼腺を固定している線維性結合組織が先天的に欠損しているために起こり、遺伝性と考えられています。ビーグルやアメリカン・コッカー・スパニエル、セント・バーナード、ボストン・テリア、ペキニーズ、バセットハウンドの若齢犬に多く認められます。また、眼窩や第三眼瞼の外傷に続いて発生することもあります。第三眼瞼腺の逸脱が起こると、その刺激によって流涙症や結膜炎が起こります。

 第三眼瞼腺は、涙液の3035%を産生している為、切除を行うと乾性角結膜炎(ドライアイ)が引き起こされることがあるため、治療は、逸脱した第三眼瞼を整復して縫合を行います。

T,H.

ダニからうつる怖い病気~重症熱性血小板減少症候群(SFTS)~ 17年07月09日

 最近西日本の女性が猫に噛まれた後に死亡してしまったニュースがありました。ウイルスに感染した猫から、そのウイルスをうつされてしまったことが原因のようです。しかしそのような事例はまれなために、過度な心配をする必要はないのでご安心ください。

 病気は重症熱性血小板減少症候群(SFTS)という本来は人の病気です。2011年に中国で分離された新しいウイルスで、ダニが人を含む動物を噛むことで感染が成立します。発熱や下痢などの消化器症状、頭痛、筋肉痛、出血、神経症状、血液検査では血球減少症がみられます。致死率は6.3-30%です。有効な治療法はなく、対症療法を行います。

 推定されている感染地域は西日本で、2013年以降からは266例の発生が報告されています。ダニの多い5~11月が発症時期のようです。

 そもそもはダニから直接人に感染する病気なので、今回報道された猫を介した感染ルートというのは稀なようです。しかし濃厚接触(口移しなど)は感染した動物からウイルスをもらう可能性があるために、厚生労働省から注意喚起がされています。

 ダニに噛まれる機会の少ない室内飼育猫では、感染の可能性はほぼないと思われます。しかし外に行く猫や犬ではやはりダニの予防薬が必須ですね。近年では温暖化の影響なのか、こうした節足動物を介した感染症の話を多く聞くようになりました。正しい知識をもって対応していくことが大事だと思います。

 ダニの駆虫、予防薬につきましてはどうぞご相談ください。

T.S.

アトピー性皮膚炎の薬 17年07月02日

アレルギー皮膚炎は主に過敏反応が病態に関与し、強い痒みを伴う皮膚症状が特徴です。アレルギー性皮膚炎は犬ではアトピー性皮膚炎、ノミアレルギー性皮膚炎、食物アレルギーや接触過敏症などがあります。これらのうちアトピー性皮膚炎は炎症、痒み、皮膚バリア機能の低下による強い慢性皮膚疾患起こすとされています。痒みは神経系と免疫相互反応によって発生し、主にインターロイキンと呼ばれる物質が痒みの原因となっています。現在、炎症や痒みを誘発するサイトカインを阻害するアポキル®錠と呼ばれる薬が脚光を浴びています。この薬はプレドニゾロンと同等の効果があるにも関わらず、プレドニゾロンの欠点である医原性クッシング症候群を生じない点が利点であるとされています。また、消化器症状を発現しにくいとされており、アトピー性皮膚炎の薬として期待されています。

H.F