南が丘動物通信

ICG修飾リポソームを用いたレーザーがん治療 17年05月28日

インドシアニングリーン(ICG)は約800nmの光を吸収すると発熱(温熱効果)し、さらに活性酸素を誘導(光線力学効果)することからがん治療への応用の可能性が期待されています。

本治療はICGを結合させたリポソームに抗癌剤を埋包させた薬剤を静脈点滴した後、薬剤が選択的に集積した腫瘍部位に定期的に近赤外線レーザー(約810nm)を照射します。レーザー照射による光線力学的温熱効果に抗癌剤の効果が加味されることで、より効果的ながん治療が可能となります。

本治療は鳥取大学の岡本芳晴教授を中心に研究・臨床応用をすすめている治療で、頭頸部腫瘍(扁平上皮癌など)や鼻腔内腫瘍、深部腫瘍、体腔内腫瘍など種々の悪性腫瘍症例で適応可能です。外科摘出が困難な症例や腫瘍の進行・増大により状態が悪化した症例で、大きな副作用を起こすことなく、腫瘍サイズの縮小や食欲の改善などQOLの維持・向上が期待できる治療法のひとつです。

H.B.

β細胞癌 17年05月21日

 β細胞癌は、以前はインスリノーマと呼ばれていた膵島β細胞の機能性腫瘍で、非常に悪性度が高く、リンパ節や肝臓、腸間膜などに高率に転移します。この腫瘍は血糖値上昇に反応してインスリンを過剰分泌するため、食後2~6時間あるいは運動、興奮後に低血糖による臨床症状が発現します。

 発症年齢は平均9.5歳(3~14歳)で、全ての体格、多くの犬種で報告されていますが、スタンダード・プードル、ボクサー、ジャーマン・シェパード、アイリッシュ・セター、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバーなどで多く発生が認められています。

 診断には、低血糖の存在を確認し、他の低血糖の原因を除外する必要があります。低血糖の際に測定したインスリン濃度が高値の場合にはβ細胞癌が強く疑われますが、低血糖が起こる症例においても血清インスリン濃度の上昇が見られたものは68%しかないと言われているため、正常値や低値であった場合にも否定はできません。その他の検査としては、超音波検査やCT検査において膵臓領域に腫瘤を確認することですが、検出率は高くはありません。

 治療には、転移が確認されない場合には外科的な摘出が選択されますが、前述の通り、診断時には転移が起こっている可能性が高いため、内科的治療が選択される場合が多いです。内科的治療としては、プレドニゾロンやジアゾキシドなどを使用し、インスリンの分泌抑制や作用の拮抗を行います。

T.H.

意外と多い猫の関節炎 17年05月14日

201716日、毎日新聞で猫の関節炎に関する記事がありました。その内容は、猫の関節炎と人間の関節炎は発症メカニズムが異なる、猫の関節炎の罹患率は14歳で30%、510歳で56.5%11歳以上は90.6%猫の関節炎には現在鎮痛剤などの対症療法以外に治療法はない。発症メカニズムが分かれば、今までと異なったアプローチで猫にとって副作用の少ない薬の開発・実用化が期待されるといった内容でした。

この、猫に起きる関節炎は変形性関節症と言われ、関節軟骨がすり減って変形したり石灰化することで関節が正常に動かなくなり、変形した骨が神経を刺激したり、関節周囲に炎症が起きるため慢性的な痛みを伴います。膝関節、肘関節、股関節、足根関節、手根関節などあらゆる関節に発生する可能性があります。

猫は犬に比べて身軽で運動能力も高く、また家で一日中ゴロゴロ寝ていることが多いため痛がっていることに気づきにくいですが慢性の進行性の関節炎を患っていることが想像以上に多いです。階段の上り下りを嫌がる、動作が遅くなった、よく寝ている、食べる量が減った、グルーミングしなくなるなどの一見加齢に伴う変化に見えるものも関節が痛いというサインの可能性があります。また、歩き方がおかしい、関節が腫れている、手根関節・足根関節の強直などが見られることもあります。

最近の猫ブームで猫の飼育頭数は増えていますし、全体的に長生きするようになってきました。せっかくなら愛猫に痛みなく快適に生活させてやりたいですね。新しい薬の開発にもぜひ期待したいですが、まず、体重管理をしっかりして関節に負担をかけないようにしていきましょう。痛みが出てくる場合には一度ご相談ください。

M.M.

心嚢水貯留 17年05月07日

 心膜は心臓や大血管を覆う袋状構造であり、心臓の動きを滑らかにするために心嚢水を含んでいます。心嚢水は様々な病気で過剰に貯留してしまうことがあり、それにより心臓を圧迫し、心臓機能が低下することを心タンポナーデといいます。

 心不全、ヘルニア、低アルブミン血症などでは漏出液、感染性では滲出液が貯留します。猫では伝染性腹膜炎ウイルスによるものもあります。しかし犬において最も多い原因は出血性で、右心房に発生する血管肉腫が一番みられます。他には短頭種では心基底部の大動脈体腫瘍、心膜の中皮腫も原因になります。特発性心膜出血はゴールデンレトリバーにみられます。

 運動不耐性、食欲不振、失神などを呈し、右心不全を伴えば腹水貯留も現れます。心エコー検査では容易に心嚢水貯留を診断することができます。

 心タンポナーデに陥った動物には心嚢穿刺を行い、過剰な心嚢水を抜去します。そしてその性状を検査して原因を推定し、それぞれの疾患について治療を検討します。心膜切除は特発性心嚢水貯留の治療法で、心タンポナーデの発生を防ぐことができます。胸骨正中切開後に、横隔神経より腹側の心膜を切除する心膜亜全摘術を行います。心膜開窓術は心臓腫瘍における緩和治療として行われます。

T.S.