南が丘動物通信

猫の甲状腺手術、上皮小体の位置 16年05月31日

猫の甲状腺機能亢進症は毎年症例は多くなっています。以前と比べCTで前もって、左右どちらが問題のある甲状腺か、摘出すべき甲状腺は頸部にあるのかを評価して行うことができるようになり、手術計画がしやすくなっています。ただ上皮小体の位置は開創しないと評価は困難なものが多くあります。一般的に上皮小体は甲状腺の最も頭側にあるものですが、今回の症例は真ん中を超えて尾側にあり難しい症例で(写真左側頭側)血管をのこしそのまま筋肉内に埋め込みました。下の写真が血管を確保して残した上皮小体です。両側摘出が多いので手術の成功か否かは上皮小体の保存状態に関わっています。甲状腺機能亢進症は日本では放射性ヨード療法ができないため、手術が第1選択になります。内科療法では完治は望めず、長期生存が困難な場合が多いためです。S.S

RIMG3327.JPGRIMG3345.JPG

鳥に卵を産ませないように... 16年05月29日

鳥の産卵に関する問題は異常卵、卵管脱、卵管炎、卵塞など様々あります。

そのような病気を予防するためには卵を産ませないことが大事です。今回は産卵防止法について紹介させていただきます。

① 巣及び巣作りの刺激を与えない

巣及びそれに代わるものを与えないようにしましょう。大きな餌入れ、ティッシュペーパーの箱、洋服のポケット、引き出し等も同じ刺激を与えることになってしまいますので気を付けましょう。

暗がりや狭い場所に行かせてはいけません。

カゴの床に紙を敷くと、紙の下に潜ってしまったり、紙をかじって巣作りの気分になるので敷かないようにしましょう。

② 交尾の刺激を与えない

背中をこすると交尾と同様の刺激を与えるのでやめましょう。

③ 他に気持ちを向けて発情をおさえる

カゴを別の部屋や人の出入りの多い場所に置くと気が紛れます。

④ 産卵してしまったら卵を取り出さない

産卵の度に卵を取り出すといつまでも産み足してしまうので、最後の卵を産み終わったら10日程温めさせてから一度に卵を取り出すようにしましょう。

D.T

犬アトピー性皮膚炎に革新的治療。アポキルいよいよ発売。 16年05月24日

アポキル錠(オクラシチニブマレイン酸塩)が日本でもまもなく発売になります。海外ではすでに使用されとても評判の良い薬です。掻痒誘発性サイトカインIL-31などのヤヌスキナーゼ阻害薬です。2013年に犬の皮膚のかゆみの重要な仲介者としてIL-31が見つかりました。IL-31は犬のアトピー性皮膚炎における痒みのサイトカインであると考えられ、これらを抑えることにより痒み刺激と炎症反応を軽減するわけです。

アポキルの特徴①副腎皮質ホルモンと同等の即効性。②アトピー性皮膚炎に高い効果③副作用が軽微④アトピー性皮膚炎以外のアレルギー性皮膚炎にも効果がある。⑤代謝時間が短い⑥他の薬との併用による安全性は高いなど評価は非常によいものです。アトピー性皮膚炎のワンちゃんたちに朗報になることを期待しております。

S.SIMG_3359.JPG

猫の眼内肉腫 16年05月22日

 猫の眼内肉腫はブドウ膜に発生する腫瘍で2番目に多い眼原発性の腫瘍です(1番はび漫性虹彩メラノーマになります)。悪性度の高い腫瘍で、特徴的なのは眼内に傷がついた後に起こる肉腫であるということです。大凡受傷後5年での腫瘍の確認がされます。

 障害の原因としては、水小体の外傷、慢性ブドウ膜炎、眼内手術などが挙げられます。臨床症状としては慢性ブドウ膜炎、緑内障、眼内出血などが認められます。腫瘍は軟骨や骨を形成しながら視神経まで浸潤していき、領域リンパ節に遠隔転移を引き起こします。悪性度が高いことから早期の眼球摘出が必要となります。ただ、鑑別診断として、上記に挙げたび漫性虹彩メラノーマのほかに、リンパ腫の転移による二次性の腫瘍の可能性もあります。これらの腫瘍における臨床症状は一致しているため、鑑別診断には一般的な眼の検査で腫瘍が確認された場合には全身状態の検査とともに、細胞診や病理組織検査が必須になりますが、細胞診を行う場合には眼内出血とそれに伴う、より深刻な合併症が起こり得る可能性があるので注意が必要となります。ただ、眼内肉腫の場合はなにより受傷歴の有無や慢性のブドウ膜炎が暫定診断に必要となります。

S.A

口腔内善玉菌を使用した治療"プロバイオティクス" 16年05月15日

飼育動物の口腔疾患、とくに歯周病への飼い主様の意識が高まっている半面、動物の行動学的な観点から口腔内ブラッシングができない場合や、高齢及び病的状態により全身麻酔下での歯石除去処置が行えない場合など口腔内の健康維持に苦慮されているケースも少なくありません。近年、口腔内善玉菌Streptococcus salivarius K12M18を使用した治療"プロバイオティクス"が注目されています。

"プロバイオティクス"は耳慣れないフレーズかもしれません。プロバイオティクス(probiotics)は抗生物質(antibiotics)に対比される言葉です。アンチバイオティクスは、「病気になってから細菌を制圧する」という治療方法であるのに対して、プロバイオティクスは「病気にならないように体に善い菌を積極的に増やし健康を守ろう」という予防的側面から生まれた言葉です。

口腔内におけるプロバイオティクスS. salivarius K12M18は、ヒトの口腔内に存在する"乳酸菌の一種"であり、健康な口腔内での主要な善玉菌です。抗菌性タンパク質BLISbacteriocin-like inhibitory substances)を産生し、これにより嫌気性菌の増殖を阻害し、口腔内に善玉菌優位な環境を作ることで、犬の口臭の改善と歯周病の進行阻止および予防が可能なことが近年の研究でわかってきました。

また猫の口内炎症例においても、口腔内への免疫調節作用や抗炎症作用から口内炎の痛みに対する減弱効果が期待されております。

S. salivarius K12およびM18を用いた動物用サプリメントは嗜好性も高く、錠剤の状態でも投薬が簡単です。病原細菌が増殖しやすい歯周ポケットにより近いところに善玉菌を増殖させてあげたほうがその効果は高まると推測されるので、粉にしたものを直接歯肉に塗布したり、少量の水に溶かして液状にして与えたりするとより効果的とも言われております。

ワンちゃん、ネコちゃんの口臭や歯周病が気になっている飼い主様はぜひご相談ください。

H.B.

脂腺炎 16年05月08日

 脂腺炎は、皮脂腺の破壊により生じる皮膚疾患で、病態として免疫が関与していると考えられていますが、詳細は十分に解明されていません。様々な犬種で認められる疾患ですが、好発犬種として秋田犬、プードル、ジャーマン・シェパード・ドッグ、サモエド、スプリンガー・スパニエルなどが挙げられ、秋田犬やプードルにおいては常染色体劣性遺伝が指摘されています。若齢から中齢で認められることが多いですが、あるゆる年齢で起こり得ます。

 皮膚症状は、初期においては鱗屑(ふけ)や紅斑のみが見られることがあり、その他被毛の色調変化(淡色に変化)や毛質の変化を認めることもあります。症状が進行すると、全身に厚い鱗屑を伴う脱毛や薄毛が認められ、毛を束ねるように鱗屑が付着した毛包円柱なども見られるようになります。痒みの程度は様々で、ほとんど見られない場合や激しい痒みを認める場合もあります。痒みがある場合は、細菌性毛包炎や皮膚の乾燥等が関与していることが多いです。一方、ミニチュア・ピンシャー、ビーグル、ミニチュア・ダックスフンドなどの短毛種における脂腺炎は、長毛種で見られるような全身性の皮膚症状が起こることはまれで、局所的に鱗屑を伴う脱毛斑が形成されます。脱毛斑は頭部や背部、耳介などに認められます。

 治療は、軽症例においては、鱗屑の除去を目的に角質溶解作用のある硫黄サリチル酸シャンプーを用いたシャンプー療法と、その後の保湿を目的としたプロピレングリコールやベビーオイルを塗布する治療が行われます。重症例においては、上記の治療に加え免疫抑制剤やビタミンA製剤などの投薬が行われます。

 脂腺炎は、前述の通り病態が完全に解明されているわけではないため、残念ながら治療によってすべての症例で十分な改善が見られるとは限らず、改善したとしても生涯に渡る治療が必要となります。

T.H.

高濃度ビタミンC点滴療法をはじめました! 16年05月01日

人医学でがん治療、美容領域で注目されている高濃度ビタミンC点滴療法は、近年獣医療でも導入されてきています。高濃度のビタミンCは生体内に入ると過酸化水素と酸素に分解されます。正常な細胞はカタラーゼという酵素を持っているので過酸化水素を酸素と水に分解することが出来るのですが、がん細胞はカタラーゼを持たない(あるいは少ない)ため過酸化水素によりDNA障害を受けたり呼吸系やエネルギー産生系に異常が起き、選択的にがん細胞を殺すことができるというものです。詳細な機序に関しては未解明な点もありますが、現在大学などで研究が進められています。

高濃度ビタミンC療法の一番のメリットはがん細胞を選択的に殺すため、従来の抗がん剤治療よりも副作用が小さいことです。ある論文では末期進行がんの患者に高濃度ビタミンC点滴療法を行ったものと行わなかったものとを比べると生存期間が4.26倍延長したという報告もあります。大学などで効果が出たと報告があったがんは、肺がん、大腸がん、膵臓がん、肝臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、脳腫瘍などなどで、全身転移があったものでも高濃度ビタミンC点滴療法をしてから転移巣が消えたなどの報告もあります。

また、高濃度ビタミンC点滴療法を続けていくことで60%の方が食欲不振や疲労感、痛みなどが良くなったと答えられています。

獣医領域ではまだこうしたデータはありませんが、新たながん治療法として注目されています。もし、何かできることがあればとお考えであればぜひ検討してみてください。

M.M.