南が丘動物通信

体脂肪測定と肥満症 13年04月16日

 人でメタボリックシンドロームという言葉が一般的になり、肥満による身体への悪影響が強く認識されるようになりました。現代では家庭における犬猫も肥満という問題を抱えるケースが非常に多くなり、獣医領域でも重要なテーマとなりました。米国では家庭の犬猫の半数以上が太りすぎといわれており、日本においても約3割が肥満傾向にあるのではないかと言われています。
 想像に難くありませんが肥満動物は疾患のリスクが増加します。呼吸器疾患、循環器疾患、糖尿病、膵炎、脂肪肝・・これらはほんの一部ですが、肥満傾向の動物はそうでない動物よりも寿命が短いことは証明されています。また甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症のように、何らかの疾患により肥満になってしまうこともあるため、より注意を要します。
 体格の評価にはボディコンディションスコア(BCS)という、肋骨の触れる程度とお腹のくびれを中心とした主観的評価法があります。さらに近年では人と同様、体脂肪が動物でも簡単に測定することができるようになりました。この方法では肥満の程度を客観的に数値化することができ、またダイエットの経過を追うことができるため非常に有用です。
 夏になると熱中症が増え、その多くは肥満動物です。大切な家族である動物を守るためにも少しずつ減量していきましょう。当院では体脂肪測定を行っております、また食事療法に必要なダイエット計画表も作成しておりますので、ぜひご相談ください。

猫の甲状腺機能亢進症手術 13年04月12日

猫の甲状腺機能亢進症は高齢の猫に良く認められます。痩せてくる、よく食事をたべる、水をよく飲む、活発になる、などが特徴になりやすい病気です。見た目が元気なことから手遅れになることが多く、気が付かずに放置しておくと心臓、腎臓、肝臓など多臓器にダメージを与えてしまいます。
治療は内服薬の抗甲状腺剤または手術です。放射性ヨード療法という放射線治療はアメリカで行われておりますが、日本ではまだ法律上の問題から行われておりません。内服療法は完治を目的にはできず、効果が低下したり副作用により継続困難になる例が多く長生きをさせることは困難です。手術は難易度は高いものの完治を目標にすることが可能で、術後薬を飲む必要もなくなることから経済的でもあります。上皮小体とよばれる甲状腺に付着した小さなカルシウムをコントロールする器官に如何にダメージをあたえずに保存できるかが手術のポイントになります。
写真は18歳猫の甲状腺です。甲状腺機能亢進症を内科的にコントロールしたのち手術にて摘出いたしました。最近痩せてきたなと思ったら診察をお勧めいたします。

変性性脊髄症 13年04月09日

 変性性脊髄症は、進行性に脊髄の神経細胞死が起こることによって、初期には後肢の運動失調および不全麻痺、中期には四肢の麻痺、後期には呼吸障害が発現して死に至る致死性神経変性疾患です。原因は進行性軸索変性、免疫学的異常、栄養学的異常、酸化ストレスなどの関与が報告されていますが、いずれも決定的な結論は出ていません。多犬種において家族性に認められることから、遺伝的要因の関与が示唆されています。好発犬種は、ジャーマン・シェパード、ボクサー、チェサピーク・ベイ・レトリーバー、ローデシアン・リッヂバック、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークで、日本では圧倒的にウェルシュ・コーギーで多くみられます。発症年齢は大型犬では5歳齢以上(平均約8歳齢)、ウェルシュ・コーギーでは約10歳齢です。
 最初に現れる症状は、通常どちらか一方の後肢の運動失調で、その後もう一方の後肢にも運動失調がが起こり、歩行時のふらつき、爪の擦過音や起立時の後肢の開脚などが顕著になります。この症状は初期の段階では日によって良化したり悪化したりします。さらに進行すると後肢を引きずって歩くようになり、やがて前肢にも運動失調が発現し起立不能となります。最終的には呼吸障害が起こり、死に至ります。全病期を通して痛みが出ることはなく、意識や知能も障害されることはありません。まれに、呼吸障害が比較的早期(前肢の症状発現の前)に出現し、突然死することもあります。
 変性性脊髄症には特異的な検査がないため、臨床検査、画像診断、脳脊髄液検査などで他の疾患の除外を行い、特徴的な臨床症状から評価を行います。また、SOD1遺伝子の変異が変性性脊髄症との関連が強く疑われていることから、SOD1遺伝子変異の検出は変性性脊髄症診断の一助になると考えられます。現在のところ、確定診断は病理組織学的検査によってのみ可能です。
 変性性脊髄症には、現在のところ根本的な治療法は存在しません。治療の主な目的は筋肉の委縮を抑え、症状の進行を予防することであるため、理学療法が主要な治療法となります。新規治療法として、遺伝子変異により発現した蛋白を標的にしたワクチン療法や、蛋白自体の発現を抑制するための遺伝子干渉などの研究、開発が進んでいます。
 

前十字靭帯断裂 13年04月02日

前十字靭帯とは、膝関節の靭帯で、大腿骨と脛骨をつないでいます。
前十字靭帯の損傷は、靭帯が変性したり、外傷を受けることで生じます。
変性は、加齢、構造異常、免疫介在性関節炎によって生じます。
外傷性では、膝関節が過伸展、過度な内転を起こした時に多く、ジャンプしたり、高いところから飛び降りたり、過度な負荷がかかった時に多いです。
症状は、足に負重したがらない跛行、疼痛が認められますが、慢性経過をたどっていたり、部分的な断裂の場合はあまり明らかではないこともあります。
診断には、触診での脛骨の前方への引き出し兆候の確認、レントゲンでの関節内の炎症像などを行います。
治療は、さまざまな外科手術が検討されています。断裂した靭帯を取り除き、損傷していれば、半月板を切除します。
靭帯再建や、力学的な負荷を軽減する骨切り術など、様々な方法があります。
患者の体重や活動性に応じて術式を判断して行います。