南が丘動物通信

BCAA製剤 12年07月24日

 病院内の検査で肝炎の数値が高値を示すことがありますが、これはすなわち肝臓の傷害を表すもので、肝臓の機能の低下を表すわけではありません。肝臓の機能低下を知るためにはTP、ALB、BUN、T-CHOL、アンモニア、TBA(総胆汁酸)などがスクリーニング検査としてありますが、血中アミノ酸インバランスを調べることで肝機能の指標となるだけでなく、肝性脳症への治療の一助にもなります。血中アミノ酸インバランスとはBCAA(分岐鎖アミノ酸:バリン、ロイシン、イソロイシン)と、AAA(芳香族アミノ酸:チロシン、フェニルアラニン)を測定することで、肝機能低下時にはBCAAが低値、AAAが高値となります。肝機能が低下すると、肝で代謝されるはずのAAAが蓄積し、同時に肝機能低下によって増加したアンモニアを代謝するために筋肉でBCAAが消費されるためにこのような不均衡が生じます。現在は簡易化したBTR(BCAAと、AAAのうちのチロシンの比)という測定法が確立され、簡単に検査することができます。
 アミノ酸製剤を与えることで、タンパク質代謝の改善、アンモニア代謝の促進、肝性脳症の改善が得られます。経口のアミノ酸製剤であるBCAA製剤が様々な商品として販売されており、良質なタンパク源として重要な意味を持っています。またBCAAが十分でも亜鉛が不足しているとアンモニアが代謝できないともいわれ、BCAA製剤には亜鉛製剤も併用することが良いとも言われています。

落葉状天疱瘡 12年07月17日

 落葉状天疱瘡は、イヌとネコの表皮と毛包が傷害されて水疱や膿疱、痂皮、びらん等が形成される疾患です。ヒトと同様に、表皮角化細胞間のデスモゾーム構成タンパク質(デスモグレイン1)を標的抗原とした自己免疫性疾患で、細胞間の接着障害が起こることにより上記のような症状につながると考えられています。また、一部の薬物(セファレキシン、サルファ剤など)に誘発されて類似の症状が発生することも報告されています(薬物関連性落葉状天疱瘡)。
痒みの程度は様々で、細菌や真菌による二次感染がない場合は、あまり強くないことも多いです。好発部位は、鼻、眼周囲、耳介、足底(肉球)、四肢などで両側対称性に認められることが一般的ですが、体幹を中心にびまん性に発症することもあります。あらゆる年齢、犬種に発症しますが、秋田犬、チャウ・チャウ、ドーベルマンなどでは遺伝的素因が認められています。
 診断は、発症部位、臨床症状、スクレーピング検査、スタンプ検査、細菌培養検査、試験的抗生物質療法、抗核抗体検査等から予測し、病理組織学的検査とあわせて総合的に評価します。これらの評価からも確定診断が難しい場合は、免疫組織学的検査において自己抗体の検出が必要になることもあります。
 治療は、二次的な感染を予防しつつ、グルココルチコイドや免疫抑制薬などによる全身的な免疫抑制療法が行われます。また、紫外線がこの疾患の悪化因子であると考えられているため、紫外線を極力避けるということも重要となります。
 落葉状天疱瘡は、自己の異常な免疫が関与する疾患であるため、治療は長期化し、完治できない場合も多いです。そのため、薬の量を適切に調整するためにも定期的な診察が必要となり、飼い主様と獣医師とのコミュニケーションが非常に重要となります。

咀嚼筋炎 12年07月10日

咀嚼筋炎は犬で起こる自己免疫異常による疾患です。
咀嚼筋は四肢の筋にない筋繊維でできており、その筋肉が特異的に炎症を起こします。
とくにジャーマン・シェパードや、レトリバーなどでよく認められます。
症状としては、食欲不振、元気消失も認められます。食べたいのに、食べづらい、食べるときに痛がるなどの症状として現れることもあります。口を開けるときに痛みを伴います。
進行してくると、筋肉の萎縮が起こり、頭の骨が明瞭に判るようになってきます。
確定的な診断には、筋肉の組織検査が必要ですが、血液検査で筋肉の損傷を示すクレアチニンキナーゼなどの上昇を伴います。
副腎皮質ホルモンの投与により免疫をコントロールして治療を行いますが、再発も多く、そのほかの免疫抑制剤が必要になることも多いです。

猫のフィラリア症 12年07月04日

犬のフィラリア症は、飼い主様の理解と予防は進んでおりますが、猫に対するフィラリア症は、まだまだ犬よりも周知されていないのが現状です。猫のフィラリアの寄生率は犬のフィラリアの寄生率が高い地域だと、猫でも高い寄生率になり、猫の成虫寄生率は犬の寄生率の5から20%と言われています。感染は犬と同じく、蚊から感染します。犬と違い、ゆっくり時間をかけて成長したフィラリアの未成熟虫が肺動脈(犬での成虫の寄生場所)に到達すると多くの場合未成熟虫は死亡し、死滅虫体による炎症が起こります。また一部の猫では少数の未成熟虫が成虫になり2〜4年生存する事もあります。
犬と猫のフィラリア症は色々の点で異なっているために注意が必要です。犬ではおもに成熟した成虫により症状がおこってきますが、猫では成虫だけでなく未成熟虫が激しい病変を肺におこします。フィラリアの死滅虫体は犬と同様に、肺の血管などが急に炎症をおこします。この時発咳や呼吸困難、嘔吐などを示す事がありますが、症状が認められないこともあります。また成虫になったあと、その虫体の変性が、重度の炎症や血液の中での血栓症を誘起し、重篤な症状や突然死を引き起こすことがあります。突然死は成虫感染猫の10~20%とたかい確率でおこります。さらに猫ではHARD(犬糸状虫随伴呼吸器症候群)という成熟した成虫にならなくても未成熟虫によってひきおこされる猫の呼吸器症候群がおこります。慢性的な呼吸器疾患は猫の喘息と似かよっており判断が困難です。猫のフィラリア症は抗原、抗体検査、レントゲン検査、超音波検査を組み合わせて評価します。猫がフィラリアにかかる割合は成虫寄生率から判断されていた確率と比べはるかに多い確立であると思われます。

予防的な薬としては、セラメクチンという薬があります。スポットオンタイプの薬剤(背中に塗るタイプの薬)がありますので、ぜひ当院にご相談ください