南が丘動物通信

処方食は適切に 18年04月01日

春の予防接種の季節がやってきました。当院では同じタイミングで、健康診断としての血液検査をおすすめさせてもらっています。そこで、「肝臓の数値が高めだけど、許容範囲」という結果が返ってくるわんちゃんも少なくありませんね。

そんなときに、「『肝臓サポート』という肝臓に良さそうな名前の処方食があるけれど、そういったフードに変えたほうがいいの?」と悩まれる飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか?

しかし、名前のイメージとは違い、決して肝疾患に万能の食餌というわけではなく、実際に「蛋白質・銅・ナトリウムの制限食」である肝臓サポートがおすすめされるわんちゃんはそんなに多くはありません。たとえば、蛋白質から生成されるアンモニアが問題となっている肝障害の状態では、蛋白質の制限が必要です。しかし、基本的に肝臓は再生能を有する臓器であるので、なんらかの要因で生涯を受けた肝臓が再生するためには、むしろ良質なたんぱく質を積極的に摂取すべきであると言われています。そのため、蛋白質の制限が逆効果になってしまう場合があるのです。

他にも、他のフードからナトリウムの制限食に変える際、急激に切り替えてしまうと、組織の線維化を促すレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系を活性させてしまうという話もあり、この面でも処方食への切り替えは慎重に行わなければいけません。

処方食は獣医師の指示のもとに食べさせることを前提で作られています。他の処方食についても、適切でない処方食が問題となる場合は多く存在するので、たとえば同居犬で購入している処方食をあげてみようかな・・・と思う前に一度獣医師に相談してみてくださいね。

K.M