南が丘動物通信

コリネバクテリウム・ウルセランス感染症 17年12月24日

 最近ニュース番組やネット上において、「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症で国内初の死亡例」というのを見ました。これは人獣共通感染症である細菌が原因の感染症ですが、犬や猫からの感染が多いとのことなので、少し調べてみました。

 コリネバクテリウムはジフテリアの近縁種で、ジフテリア毒素を産生し症状を引き起こします。イギリスを中心に欧米諸国でも散発的に発生が認められ、イギリスではジフテリアと同等の扱いとされています(日本ではジフテリア菌のみが2類感染症に分類)。国立感染症研究所によると、平成2911月末までに報告されているコリネバクテリウム・ウルセランス感染症の国内感染例は25件で、犬や猫を飼っていたり、野良猫に餌をやったりなど、動物と関りを持つ患者がほとんどであったそうです。海外でも牛の生乳からの感染のほか、やはり猫などからの感染を疑う症例が多いようです。ちなみに国内で人から人への感染は報告されていません。

 症状は発熱、扁桃・咽頭の偽膜形成、リンパ節腫脹、呼吸障害、心筋炎、神経炎、中耳炎などで、犬や猫ではくしゃみや鼻汁などの風邪様症状が出ます。治療は抗生物質の投薬が基本で、重症化すると今回の症例のように死亡する例もあるようです。

 もしかしたら診断できていない可能性もありますが、犬猫の飼育頭数と比較すると感染例はあまり多い印象ではありませんし、最近発見されたわけでない昔からある感染症なのだと思います。死亡例が出たので大きく報道はされていますが、過度に不安を煽られ心配するわけではなく、今回に限らずやはり犬猫からも感染症はあるのだということを認識し、動物たちとの過剰な接触は避けて常識的な触れ合いをすることが大事なのだと思います。家族であるかわいい犬猫たちですから、なおさら正しい知識をもって接することが重要ですね。

T.S.