南が丘動物通信

ペディオコッカスプロバイオティクスの臨床応用 11年11月29日

 プロバイオティクスとは、世界保健機構(WHO)の定義で「人や動物の消化管に常在する有益な細菌であり、十分な量の生菌を投与することで、宿主に健康効果をもたらす生きた微生物」とされています。特にペディオコッカス菌を含むプロバイオティクスは、近年小動物臨床において消化器疾患、免疫疾患、慢性腎臓病などに対する効果が示され注目を集めています。
 ペディオコッカスとはPediococcus acidilacticiとSaccharomyces boulardiiの混合プロバイオティクスで、両菌の特徴として、酸素への曝露や高温、高酸性環境下においての抵抗性が挙げられます。これらのことにより、Bifidobacterium属やLactobacillus属などの従来のプロバイオティクスと比べて、胃酸によって死滅せずに消化管に届いて最大限の効果を発揮することができます。また、小動物臨床では細菌感染症に対して抗生物質は日常的に使用されますが、ペディオコッカスは抗生物質に対しても抵抗性が示されており、抗生物質との同時投与においてもその効力が失われない可能性が示唆されています。さらに、コクシジウムなどの寄生虫感染症やClostridium difficile感染に対する免疫反応を高めることも証明されています。
 これらの特徴から、ペディオコッカスプロバイオティクスは様々な臨床応用が期待されています。現在報告されている効果としては、①ストレス性消化器疾患軽減効果、②急性消化器疾患の犬に対しての抗生物質投与による副作用の緩和、③慢性消化器疾患に対する抗炎症薬や免疫調節薬などの医薬品を減量し、副作用を軽減する、④免疫介在性溶血性貧血に対する抗炎症薬や免疫調節薬などの医薬品を減量し、副作用を軽減する、⑤慢性腎臓病患者において食欲と体重維持の助けとなる、などがあります。今後、多くの慢性疾患例に対する使用が進むことで、より多くの効果が明らかにされることが期待されています。