南が丘動物通信

高カルシウム血症 11年11月15日

高カルシウム血症

血液中のカルシウム値は、頸部にある上皮小体から出る上皮小体ホルモン(PTH
)で調整されています。正常動物ではその値は約10mg/dlに保たれるように、PTHが調整しております。体内にあるカルシウムは99%が骨や歯などの硬組織中に存在し、残りの1%が、血液、細胞、神経などの軟組織に存在します。また、軟組織に存在するカルシウムは、イオン化しているカルシウムが、約50%ほどを占めこのカルシウムイオンが真の生物学的活性を持っており、その濃度はPTHで調整されています。イオン化カルシウム濃度は非常に厳密に活性型ビタミンDや、リン、PTHでコントロールされております。リンの上昇は、カルシウムを上げないように働きかけます。PTH以外にも、PTH関連ペプチド(PTH-rp)や破骨細胞活性化因子が血中カルシウム濃度に影響を与えます。PTH-rpは、腫瘍細胞から放出されるPTHに似た活性をもつペプチドで、犬における高カルシウム血症の重要な鑑別疾患の1つになります。腫瘍(リンパ腫や。肛門嚢腺癌、骨肉腫など)が、PTHに似た物質(ペプチド)を放出し、体がそれに反応し血液中のカルシウム濃度を上昇させます。他にも上皮小体が腫瘍化もしくは、活性化する結果、本来あるPTHが上昇し、高カルシウム血症になることがあります。その他にも、腎不全や、ビタミンD過剰症、副腎皮質機能低下症や、先天的な甲状腺機能低下症、食事、サプリメントでも高カルシウム血症になり得ます。
高カルシウム血症の症状は、高血圧や、不整脈、神経障害、体内の石灰化から、食欲不振、嘔吐まで様々です。飲水量の亢進もよく認められます。治療は、その原因の治療や、輸液による対症療法になります。その他にも、骨の破骨細胞の活性を低下させ、骨からのカルシウム導入を抑制するビスフォスフォネートによる治療も効果が期待出来ます。
高カルシウム血症は、血液検査ではじめて認識出来るくらい軽度なものから心電図に異常を示すくらい深刻なのもあります。オーナーは、比較的お水をよく飲むということで、来院されることが多いです。元気であって、食欲もあり、でも異様に水を飲むといった症状がでて来た場合等、気になることがございましたら、当院にご相談頂きたいと思います。